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2020年8月16日 (日)

惜別の歌

好きな歌のひとつに「惜別の歌」があります。

はじめて聴いたのは小林旭のレコードからでした。

その後、多くの歌手がカバーしていますが、中央大学の学生歌でもあると最近知りました。

大学(または旧制高等学校)の寮歌が、そのまま流行歌になり広まった例はいくつもあり、この歌もそのひとつかなと思っていました。

興味が湧いて調べてみると、元詞は島崎藤村の「高楼」という詩で、妹が嫁ぐ姉との別れを惜しむ会話という形になっています。

なので1番の歌詞中、本来なら”悲しむなかれ わが姉よ”となるところ、「惜別の歌」では”悲しむなかれ わが友よ”となっているのにまず違和感があります。

また、作曲者が、明治生まれの島崎藤村よりもずっとのちの昭和生まれの藤江英輔という事も知りました。

島崎藤村の詩に曲を付けた段階で、何かの理由があって別れの対象が姉から友に意図的に改変された、と考えるのが妥当でしょう。

もう少し調べを進めてみると、作曲者藤江英輔氏の作曲にまつわる手記と呼ぶべきものが、あるサイトに載っていました。

http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/04/post_4858.html

読み進むうちに胸の詰まる思いがしてきました。

 

昨日は太平洋戦争の敗戦記念日。

式典でこの国の首相は空疎な平和実現の式辞を読み上げたそうです。

彼を支持する声の大きな人たちは、先の戦争は欧米に搾取され続けるアジア同胞を解放するための正義であり、国体護持と国民を守るための止む終えない戦争だったと考えているようです。

だから侵略戦争ではないし、アジア同胞に非道もしていないと。

しかし、職業軍人や徴兵された兵隊の少なからずが、「敵」に殺されたのではなく、武器も食料も乏しい過酷な環境の中で、降伏することを許されず自決したり、病気や餓死で命を奪われていった事実に、目をつぶり口をつぐんでいることに恥ずかしさを感じないのだろうか。

「特攻」の勇敢な美名のもと、若者の将来を奪い使い捨てしてきたこの国が、アジア同胞には非道を働いていないと、どうしたらそんな思考回路が出来上がるのか。

この国が、権力者が、まず国民を殺していたのですよ、そんな国を復活させたいのですか。

 

単なる別れを惜しむ歌として「惜別の歌」を聴くことはもうできません。

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コメント

書き込み有難う御座いました。(レスは、当該記事のコメント欄に付けさせて貰います。)

「惜別の歌」、悠々遊様の書き込みにより、其の存在を初めて知りました。気になって自分も調べてみた所、此方に書かれている様な背景の在る歌なんですね。実際に聞いてみましたが、哀愁を帯びた良い歌で、背景を知ると余計に心に沁みます。

先日、「沖縄スパイ戦史」(https://www.nihon-eiga.com/program/detail/nh10009159_0001.html)というドキュメンタリ番組を見ました。沖縄少年兵を取り上げた、2年前に放送された番組ですが、戦争の事は結構知っている積りで居たけれど、此の番組で知った事実は少なく無かったです。「軍隊は国民を守るのでは無く、国体や権力者を守る存在。」というのが如実に判る内容で、正直ぞっとしました。「敵兵の捕虜になれば、日本の実情を話すだろう。」という事から、波照間島から(日本軍が駐留していたので住民の監視が出来たのだけれど、マラリアの温床地帯としても有名だった)西表島へ全住民が強制的に移され、結果的に敵兵では無くマラリアによって3分の1の住民が亡くなった。又、スパイと無根拠に決め付けられ、日本人によって殺害された日本人も結構居た様で、戦争が生み出す狂気を感じずには居られませんでした。

戦争には一方的な被害者等は居らず、加害者の側面も必ず在る。そういった事も、理解しないといけないですね。

giants-55さん、こんこんばんは~
何度も繰り返し聞いた歌ですが、今ではより重みのある歌のひとつになってしまいました。
徴兵された兵隊も、聖戦と信じ込まされ志願した少年兵も、加害者側の「被害者」ですね。
戦局を好転させ得るような状況下での捨て駒なら、まだ納得も出来たかもしれませんが、絶望しか残されていない中での命の使い捨てを強要された彼らの心情を思うと、憤りしかありません。
今また日本の戦争の暗部に目を背け、戦争ごっこを始めたい一部勢力が、正面から戦争反対を訴える人たちを非国民呼ばわりするのを見聞きすると、暗澹としてきます。

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