美味い・・・話
困ったことに最近食いしん坊になってしまった。
年齢とともに体力の低下を感じる昨今だが、それに反比例して食欲が増してきたのだ。健康診断の結果、中性脂肪や悪玉コレステロールが多いということで、2年ほど前からそれを抑える薬を処方されたのだが、逆にそれでスイッチが入ってしまったらしい。
もともと好き嫌いがなく、グルメとは対極でよほどのゲテモノでない限り、何でも美味しく食べられる体質だったが、最近は食欲の春夏秋冬で1年中衰えることがない。
そんなこともあって、今まで気にかけなかったバラエティー番組のグルメレポートを見る機会が増えたのだが、そこで気になって仕方がないことがある。芸能人やアナウンサーが街に出て食堂・レストランで食事をしたり、有名どころの料理人をスタジオに呼んで食事をするとき、決まり文句のように「美味い」を連発するあれだ。特にお笑い芸人の場合など芸ノー人かとあきれている。
高級食材でなくても自分で選んだ材料を使って、プロの料理人が作るものが不味いわけがない。なのに馬鹿のひとつ覚えのようにやたら「美味い」を連呼すると一気に興ざめしてしまうのだ。これは美味そうと思っていたものでも急に怪しくなる時すらある。
だからといってどこかのグルメ漫画のように、美味しさの能書きを垂れてほしいわけでもない。番組で紹介され美味いと評判の店にでかけ、行列待ちをしようとも思わない。
人の味覚は様々だ。たとえ一流の料理人が作っても百人が百人とも美味いというものはないと思うし、プロの料理人が作る限り100%不味いものもないだろう。その時の体調によって今まで美味いと思っていたものがそれほどでもないと感じる時があるいっぽう、普段食べ慣れたものでもおなかが空いていれば一層美味いと思うこともある。
先にも書いたように、私は大抵のものが美味しく食べられる。一種の特技といってもいいかもしれない。家で食事をしていてよく言われたのが「おいしいの? おいしくないの?」。黙々と食べるものだから食事を作る側からすれば張り合いがないのだろうが、こっちは不味いと思ったことがないのだから、いちいち美味しいと言うまでもないと思っている。
しかし、食いしん坊になってから自分でも時々簡単な料理モドキをする機会が増え、そんな時には「味はどう?」と聞いてしまうのだから勝手なものだ(笑)。
そんな私でもこれまでたった一度だけ、食べるのを苦痛に感じたことがある。
先に断っておくが、私は大のカレー好きで、家で作ったカレーなら朝昼晩3日続けても飽きないほど。外食でもよくカレーを食べるが、特に口に合うのがココ壱番屋のカレールウだ。同じカレーのチェーンでもゴーゴーカレーの方は今ひとつかな。
それは昔住んでいたアパートのお隣さんでカレーうどんをごちそうになった時のこと。そのお宅には幼稚園児のお子さんがいて、子供用に甘口のカレーを使っておられたのだが、私の頭にはカレーとはスパイスのきいた辛口、というイメージがすでにインプットされていたので、一口食べた瞬間絶句。しかし口に合わないので遠慮しますとは言えず、喉の奥の方でうどんの侵入を拒絶しているのを、なだめすかしながら苦行のごとく完食したもの。
お隣さんも私のカレー好きは知っているので、お代わりを勧められたがさすがにそれは厚かましいからと遠慮させていただいたものだ(苦笑)。